コンバージョン(CV)の種類や、それぞれの特徴、アトリビューションの考え方について
吉岡 佑
佐賀県出身。GMO グループ、アナグラム株式会社などの広告運用専門会社にて大規模広告の運用に従事した後、2021年に当社に参画。
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はじめに:コンバージョンとは?
コンバージョン(CV)とは、原義では「変換」を意味する英単語ですが、マーケティングやビジネスの分野でよく使われる用語で、特定の目的や目標を達成することを指します。
特にWebサイトにおいては、訪問者がサイト上で設定した目標を達成する行為を指します。
具体的な例では、
- 商品を購入する
- 会員登録をする
- メールニュースレターに登録する
- 資料をダウンロードする
- お問い合わせフォームを送信する
といった行動が挙げられます。
このようなコンバージョンは、より詳細に分類することが可能であり、それぞれに異なる特徴があります。
本記事では、これらのコンバージョンの分類について、それぞれの種類とその特徴を解説していきます。
コンバージョンの種類
コンバージョンには、以下のような種類があります。
①ラストクリックコンバージョン(直接コンバージョン)
直接的にコンバージョンに関わったクリックを、ラストクリックコンバージョン と呼びます。
先に挙げた購入アクションのような、いわゆる一般的なコンバージョンを指します。
しかし、あまりにも使われている指標だけに、必ずしもベストではない、という調査もあります。
ソーシャルメディアを対象にした Adobe の調査によると、
ラストクリックコンバージョンよりもファーストクリックコンバージョン (最初に接点を持ったクリック) の方が効果的で、94%も価値を増加させた
参考【https://markezine.jp/article/detail/15413】
といった結果が出たこともあります。
あくまでソーシャルメディアを対象にした調査であるため、必ずしもリスティング広告には当てはまりませんが、重要な指標と捉えてもよいのではないでしょうか。
とはいえ、ラストクリックコンバージョンの意味が薄れることはありません。購入に直接紐付いている以上、今後も使われ続ける指標でありつづけるでしょう。
②マイクロコンバージョン(中間目標)
最終的な目標の前に設けたコンバージョンポイントのことを、マイクロコンバージョン と呼びます。
ECサイトであれば購入の前段階である「決済情報を入力」、入会をコンバージョンとするサイトならその手前の「お問い合わせ」や「資料請求」などを指します。
③ ビュースルーコンバージョン
あるウェブサイトにアクセスした際に広告を目にしたものの、その場ではスルー。
改めて別のルートからコンバージョンに至ったケースは、ビュースルーコンバージョン と呼びます。
ディスプレイで閲覧したからといって認知を取れているとは限りません。
潜在的な見込み顧客を対象にディスプレイ広告を出しているケースもあるからです。
ですから上記二つのコンバージョンと単純に比較できないとはいえ、一定の指標にはなるでしょう。
④アシストコンバージョン(間接コンバージョン)
リスティング広告からランディングページにアクセスしたユーザーが、その場ではコンバージョンせずに離脱したものの、時間をおいて別のページや検索などから再度ランディングページにアクセスし、コンバージョンに至ったケース。
こうしたケースを アシストコンバージョン と呼びます。
前述のファーストクリックコンバージョンもGoogle広告では、アシストコンバージョンに分類されています。
⑤クロスデバイスコンバージョン
たとえばスマートフォンで検索して広告をクリックした後、PCなど 別のデバイスでコンバージョンした場合に記録されます。
これを クロスデバイスコンバージョン と呼びます。
顧客のなかには「スマートフォンで通販サイトの決済をしたくない」と考える層もいるでしょう。
そうした層のコンバージョンを拾うために、クロスデバイスコンバージョンが存在しています。
効果測定の考え方:アトリビューションとは?
こうして概観すると、コンバージョンの詳細な分類は、直接的ではないものの、広告効果が出たパターンを網羅できるように作られていることがわかります。
関連して、アトリビューションという概念についても解説していきます。
ある時期を境にGoogleは「アトリビューション(間接効果)」という考え方を積極的に打ち出すようになりました。
アトリビューションとは、メディアごとのコンバージョンへの貢献度を指す言葉です。
ネット上で買い物をする場合、多くの人は購入の前段階でさまざまな広告やメディアと接触します。すぐさま商材を購入する例は稀だといえるでしょう。
例として、このようなパタ-ンを見ていきます。
従来型の考えでは、コンバージョンは「広告②」によって生まれた、とされていました(ラストクリックモデル)。
この考え方に基づけば、広告②だけが有効で、ほかは不要ということになります。
しかし広告①にも価値を持たせるのがアトリビューションの考え方です。
言って見れば、従来型の考え方は健在層にターゲットを絞った考え方です。
アトリビューションはターゲットを広げ、1度広告と接触した潜在ユーザーが商材を再想起した場合も、広告の貢献を認めるという考え方 になります。
アトリビューションモデルの種類
アトリビューションには、振り分けのルールを基準に2種類のモデルがあります。
アトリビューションモデルの種類①事前に振り分けのルールが決まっているもの
事前に振り分けのルールが決められたアトリビューションとして、以下のものがあります。
- ラストクリック:最後にクリックされた広告やキーワードにコンバージョンの成果を起因させる
- ファーストクリック:最初にクリックされた広告やキーワードにコンバージョンの成果を起因させる
- 線形モデル:すべてのクリックの貢献を均等に認める。
- 減衰モデル:コンバージョンに近いクリックに多くの貢献を認める
アトリビューションモデルの種類②事前に振り分けのルールが決まっていないもの
上に挙げたもの以外には、「データドリブンアトリビューション」(=DDA) というものがあります。
AIを活用して、コンバージョンへの貢献を割り出すものであり、実際の状況に近い分析結果 が得られます。
アトリビューションモデルの現状
なお注意するべき点として、2023年4月をもって、Googleでは、「ラストクリック」「データドリブン」以外のサポートを終了しています。
現在Google 広告において、自動入札に使われるコンバージョンには、「データドリブンアトリビューション」モデルが最も多く使用されています。
この「データドリブンアトリビューション」が台頭していること、またカスタマージャーニーの多様化により、「ラストクリック」以外のルールモデルは柔軟性がなく、使用率が低下していたため、このようなアップデートが行われたようです。
参考【https://support.google.com/google-ads/answer/13427716?hl=ja】
アトリビューションから、戦略を考える
コンバージョンに至る経路が明らかになると、広告の戦略にも大きな影響が与えられます。
さきほど挙げた図を例に取りましょう。
たとえば広告②だけをみて直接コンバージョンした人よりも、広告①を見た後広告②を見た人の方がコンバージョンに至る可能性が高かったとしましょう。
この場合、広告①により注力すべきであることが分かります。
データドリブンアトリビューションを利用すれば、成果の出るキーワード・広告・キャンペーンを把握して、より実際の状況に近い分析結果が得られる ため、上手く活用すれば戦略の策定に大きく寄与できるでしょう。
コンバージョン数を増やす施策について
最後に、成果を上げるためのコンバージョンの考え方について解説します。
リスティング広告の特徴の一つに、「成果を可視化できる」というものがあります。
成果を上げるためには、最終的な目標の手前にコンバージョンポイントをいくつか設定し、そこを観察しながら調整していくことが予算や目標を決めることと合わせて重要なポイントになっています。
たとえば300万円の車を売ろうとしている店舗が、「購入完了」にコンバージョンポイントを置いたとします。
おそらく月に数件、あるいは月に1件も売れないという事態が、容易に想像できます。
このような場合、例えば「購入の手前に」コンバージョンポイントを置いてみるのを検討し、反応を観察してみましょう。
その上でウェブサイトを改修してみたり、コンバージョンポイントを調整してみたりすると良いでしょう。
このとき気をつけるべきことは、コンバージョンポイントをコロコロ変えるくらいならば、増やすくらいの方が良いということです。
車をカスタマイズする、カートに入れる、など設定すべきコンバージョンポイントはいくつか考えられます。
このとき「カートに入れる」段階まで進んでくれるのにユーザーが購入に至らないのはなぜか、などと分析するのが最終的な成果を増やす上で重要になってきます。
補足:コンバージョンポイントは機械的に計測できなければならない
蛇足になるかもしれませんが、コンバージョンポイントは機械的に計測できなければなりません。
たとえば転職エージェントでは会員登録、求人への応募などがコンバージョンポイントになりえます。しかし「転職成功」はウェブ上で行動が追えません。
面接の出来不出来などはオンライン上の行動とは無関係な要素だからです。
コンバージョンポイントは一つきりである必要はありませんが、コアになる部分はあります。
それはあくまでウェブ上で機械的に計測できる要素にしておくべきです。
おわりに
本記事では、コンバージョンにおける種類、およびアトリビューションモデルやそれを踏まえた施策検討についての解説を行いました。
こうしたコンバージョンやアトリビューションへの理解を深めることで、より実際のユーザーの行動に寄り添ったマーケティング施策検討や、事象を正しく認識したうえでの詳細な分析へと繋げられるのではないでしょうか。
本記事が、より成果につながる施策の構築に役立つヒントとなれば幸いです。
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