広告運用の自動化時代で、人間が考えるべきこととは?
吉岡 佑
佐賀県出身。GMO グループ、アナグラム株式会社などの広告運用専門会社にて大規模広告の運用に従事した後、2021年に当社に参画。
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【初心者向け】リスティング広告とは?発注前に覚えておきたい基礎知識を解説
はじめに
広告運用は、自動化の進展により、多くのプロセスが効率化されています。
しかし、最適な結果を得るには、ターゲティングや訴求内容の設計など、依然として人間の判断が求められる部分もあります。
本記事ではリスティング広告に限定せず、運用自動化時代において考えるべきこと、という観点から、広汎的なウェブマーケティングについて解説します。
自動化時代の広告運用で人間がすべきこと
リスティング広告は上手に運用すれば大きな効果をもたらします。その反面、運用には手間がかかります。
中小企業がインハウスで運用しようとした場合、人材の確保も深刻な問題となります。
しかし近年Googleが押し進めている自動化が、ノウハウの欠如や人材不足を一定程度補ってくれるかもしれません。
その反面、人間が介入できる部分が少なくなってきているのも確かです。
自動化が進む代表的な機能
代表的なものだけでも、以下のような部分で自動化が進んでいます。
- ターゲティング(誰にアピールするか)
※初期設定に人間の介在は必要。 - ビッティング(入札)
手動での管理も一応可能だが、ほぼ自動化。 - レスポンシブ検索広告
あらかじめ設定した複数の「見出し」や「説明文」を、配信の度ごとに最適な組み合わせで自動配信してくれる機能です。
かつては配信に先立って膨大なA/Bテストを繰り返さなければなりませんでしたが、今やA/Bテストはシステムが代行してくれるようになっています。 - 自動化ルール
Googleでは「自動化ルール」、Yahoo!では「自動運用ルール」と呼ばれる機能です。
GoogleとYahoo!にはできることに違いがあり、またリスティング広告とディスプレイ広告でも差があります。
主に一日あたりの予算の調整、効果の低いキーワードの停止と効果の高いキーワードの追加、ターゲットの属性の自動調整などが可能で、分析・戦略立ての時間確保に貢献してくれます。 - 最適化案
システムが独自に算出した「最適化スコア」に基づいて、広告配信のパフォーマンスを最大化するべく、さまざまな施策を提案してくれる機能です。
広告文案、キーワード案、ターゲティングの修正、重複するアプリキャンペーンの修正、低い目標コンバージョン単価の修正、新しいキーワードの追加など、提案は多岐にわたります。 費用対効果を悪化させている原因に気がつくこともできます。
以前は人間が手動で設定した入札額でオークション(注1)に参加していましたが、現在は過去の配信データを元に媒体側システムが1ユーザーごとに入札価格を算出しています。
リアルタイムで適切な値を提示してくれる強力な機能です。自動化のなかでも入札は特に重要な部分だといえます。
オークション……リスティング広告の広告費には定価がなく、オークションで決まります。
では、人間がすべきことは?
こうした自動化機能は、効果的なターゲティングや訴求内容を補完しますが、広告効果を最大化するには人間の戦略的な設定が必要です。
具体的には、このような設定が必要です。
- 自動入札がワークしやすくなるように、オペレーションしてあげること
- キーワードや文言の選定などのクリエイティブな部分
- 出稿する時期、アカウント構成を考えること
- 予算規模とコンバージョン率の設定をGoogleやYahoo!に投げること
成果改善の原理原則は変わっていませんが、自動運用に寄り添うために手法が大きく変化しています。
総合すると、広告運用の自動化進展によって、「入札の自動化をうまく使うために、どうアカウントを作って、どうターゲティングし、どう訴求するか?」 という考え方にシフトしており、これを決めるのが人間の仕事となります。
次からは、具体的にするべきことを一つずつ解説します。
①ターゲットを考える
成熟市場において成果の決め手となるターゲットインサイト
成熟市場においては、ターゲットを考えること、またターゲットユーザーの深層心理(インサイト)を探ることが広告効果の向上に欠かせません。
前述の通り、現在のリスティング広告において人間がターゲットを考えることは最重要課題のひとつと言っても過言ではありません。
もちろん広告が広告である以上、「自社の商品を誰に届けたいのか」というマーケティングの視点が定まっていなければ、思い通りの成果は出ません。
そういう意味ではターゲットの明確化の重要性は広告における基礎中の基礎のように思えます。
しかしリスティング広告の強みは、対象をかなり細かく絞り込んで配信できるということです。
ですから「ターゲットをどれだけ明確にできるか?」という点はとりわけ重要なのです。
この「ターゲットを考える」という観点において重要なことは、表面的な属性にとらわれてしまい、ターゲットを極度に抽象化しないこと── すなわち、「生身の人間」に寄り添うこと だと言えます。
入力しなければならない項目をテクニカルに埋めていくことに囚われてしまうと、ターゲットの消費行動の根底にある、もしかしたら本人さえも気付いていない感情に思いが至らず、結果として思うように広告の訴求効果が上がらない可能性があります。
これを回避するべく、ターゲットが抱えている思い、課題に照らし合わせ「だったらこういう商品が合うんじゃないか」と訴求につなげていく、いわゆる 「消費者インサイト」 や 「ターゲットインサイト」 と呼ばれる、ユーザーの顕在化したニーズの奥でまだ意識されずにいる欲求を探っていくことが重要と言えます。
成熟市場においては、目先のことばかりに捕われず、ユーザーのインサイトを見つけ出すことが成果を出す上で大切になっていきます。
インサイトを見つけるには
では、インサイトを見つけるにはどうすればいいのでしょうか。
地道ながら、ターゲットを考えることは 仮説を立てること と近しい関係にあります。
「こういうユーザーが困っているんじゃないか」「こういう商品が欲しいんじゃないか」 という点と点とをつなげて考えていくのです。当然、事前に考えるだけではなく、適時修正していく必要もあります。
フレームワークはインサイトを見つけられるのか
ターゲットを深掘りするにあたって、しばしばフレームワークによる分析が行われることがあります。
例えば3C分析や、SWOT分析といったものが代表的です。
3C分析:市場・顧客(Customer)、競合(Competito)、自社(Company)について、それぞれの特徴をリストアップ。客観的な事実を徹底的に集め業界環境を分析する手法。
SWOT分析:自社の外部環境と内部環境をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つのマトリックスで分析し、自社がとるべき「戦略目標」を引き出す手法。
参考:【https://business.adobe.com/jp/blog/basics/marketing-framework】
ターゲットが明確になるのであれば、こうしたフレームワークは使うべきですが、私の経験上、反面よほどの上級者でない限り、ターゲット像がどうしても抽象的になってしまいがちです。
これにより、実際の悩みやニーズに寄り添えなくなってしまうというリスクがあります。
たった1人に焦点を合わせる顧客起点のフレームワーク:N1分析
近年話題となったフレームワークに、マーケターの西口一希氏が考案した「N1分析」があります。
通常マーケティング分析は大量のユーザーからのアンケートを集計し、平均値から架空の人物像の指向性を算出します。
そしてその結果を元に戦略を立案していきます。
しかしN1分析は情報を広く集計するようなことはしません。
顧客を9つのセグメントに分類し、各セグメントから1人ずつ特定の個人を選び出すことで、考え方や意見を徹底的に深堀りするという方法を取ります。
これにより、平均値によって丸められたユーザー蔵からは得難い顧客の生の声を反映させることができます。
調査するのはそれぞれのセグメントで1人ずつに過ぎませんが、具体的な1人を分析することで顧客起点のリアルなインサイトを探ることが可能となります。
熱心なユーザーからポジティブな反応が返ってくる施策はロイヤリティの拡充に効果が、離反顧客、認知・未購買顧客、未認知顧客が感応する施策は新規獲得に効果が現れます。
これらの施策が例外的な少数者にのみ有効なニッチなものなのか、それとも広範な層にアピールする有効打なのか、コンセプトテストを行うことで有効性を見極めることができます。
テクノロジーの発達に伴い、マーケティング業界は手法偏重に陥りがちです。
分析する際にリアルなユーザーが不在になりがちな風潮にありながら、顧客起点という原点に立ち戻ったN1分析。大規模な市場調査によって生み出された「幻のペルソナ」に振り回される愚を回避し、いち早くピュアな新規性を見つけ出す良い手法だと思います。
参考:西口一希『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』
【https://www.amazon.co.jp/dp/4798160075】
②予算と目標を決める
リスティング広告を打つ上で、目標と予算の設定は初歩中の初歩といえます。
というのは、GoogleとYahoo!において広告は予算と目標を基準に自動運用されており、この2点の設定が運用上欠かすことができないからです。
もし仮に予算だけGoogleに伝えたとしましょう。すると「予算は使い切っているが、成果が目標に届いていない」などという事態を招きかねません。
2010年代初頭のころは、入札も予算の引き上げも手動でした。ところが自動化が進展した結果、目標の部分も設定する必要が出てきたのです。
予算と目標の決め方には
(1)目標から決めるパターン
(2)予算から決めるパターン
の二つがあります。
どちらでもやりやすい方法を選んでも構いません。
それぞれ、フローについて解説していきます
②-1目標から予算を決める場合
まずユーザーからの売り上げや利益から逆算して目標を決めます。それから1件のコンバージョンを得るために、どこまで予算をかけるのかCPA(Cost per Action 単価帯)を考えます。
CPA × 目標件数=予算
ビジネスの現場では顧客の属性を絞り込んだ上で前提となる目標件数を踏まえ、PR戦略とも絡めながらマーケティング戦略を進めることが多いように思います。
②-2予算から決めるパターン
初めに予算ありき。リスティング広告に使える予算が会社から降りてくるので、それに合わせて目標を決めるパターンです。
予算の中で目標を決めなければならず、かつ予算の枠はなかなか変えられないため「目標は走りながら考えます」となってしまう場合もなくはありません。
予算に対して目標を明確にしておくことが、自動運用を最大化させるポイント。
ですからこうした場合でも、先に目標を決めることが重要です。
いずれも、「目標を先に明確化する」 というポイントは共通しています。
自動化の進む広告運用において、機械を補う形で、人間が検討していくべきでしょう。
③訴求を考える
前述しましたが、訴求の手段たるクリエイティブを検討することは、まだ代替が利きにくい、人間の分野であると言えます。
独自性の強い訴求を考える
言うまでもありませんが、ターゲットごとに伝えるべきメッセージ(広告文)は異なります。
メッセージを打ち出す上で、競合と比べたときの自社独自の強みを把握しておくことは欠かせません。
価格、品質、早さ、耐久性など強みとされる部分はさまざまです。長所を発見するひとつの方法として、ポジショニングマップを作成することがしばしば行われます。
その手法は、競合他社と比較したときの自社の立ち位置や訴求ポイントを明確化することです。
ポジショニングマップは、縦軸×横軸から成る二次元マップです。つまり自社の商品のスペックをふたつの観点に絞り、強みや弱みを相対化する図表になります。
ユーザーが商品購入の決め手とする要因は多岐にわたるはずです。
ふたつに絞る過程で、自社のターゲットに打ち出したい項目を抽出しなければなりません。
次にポジショニングマップにより浮かび上がった業界での自社の強みをユーザーの需要とすり合わせていきます。
重要なのは顧客が目にしたとき、どれだけ「私専用」だと感じてくれるか、ということです。
「このメッセージを書いた人は、私のことを知っている」 と思わせられれば、しめたもの。
広告が訴求している価値観をユーザーが自分事化してくれれば、自社商品を購入してくれたり、ファンになったりしてくれるでしょう。
訴求ポイントを考えていく上で他社との差別化が重要でした。
しかしメッセージを伝えるときに大切なのは、ターゲットに対して「この商品はあなたに合っていますよ」と伝えることです。
総括的に、「①ターゲットを考える」の解説も踏まえて、広告文は
伝えるべきターゲットに寄り添う
競合と比較したときの自社の強みを打ち出す
フレームワークを十分活用する
これを徹底したうえで作りましょう。
④クリエイティブを考える
検索連動型広告を優先するか、コンテンツ広告を優先するか
ターゲットに適した文言やデザインは当然重要ですが、その発信の手段についても考えるべきです。
「検索連動型広告とコンテンツ広告のどちらを優先するか」という問いは、言い換えればターゲットとメッセージと予算総額を考えて、広告の予算配分を行う ということです。
それでは、実際の配分パターンを見ていきます。
知名度があれば検索連動型広告
検索連動型広告は「検索されてナンボ」の世界ですから、「検索されるかどうか」 が判断の分かれ目になります。
実際に検索してもらえる商品であれば、広告の費用対効果が合いやすい。
検索されない商品をいくら検索連動型広告に出しても、そもそも広告が表示されないので効果は上がらない。
広告を打ち始める時点で既に知名度があるとか検索してもらえる商材であれば、検索連動型広告は有効でしょう。
ニッチな商品でも検索される商材ならば、リスティング広告は効果を発揮します。
あるいは鍵や水道のトラブル解決のように、緊急性の高いサービスは検索広告でなければ意味がありません。
知名度がなくても作用するディスプレイ広告
ディスプレイ広告に関して言えば、ターゲットをある程度広げてあげれば、知名度がなくても形になります。
このあたりのことはケース・バイ・ケースですが、青汁を例として考えてみましょう。
「まずい!もう一杯」のCMで知名度のあるキューザイの青汁であれば、検索連動型広告にも使い道はあると思います。
しかし新興の青汁であれば、どちらかというとディスプレイ広告で「健康診断、大丈夫でしたか?」のようなキャッチコピーで推した方が衝動買いを引き起こしやすいはずです。
失敗するリスクが高いのは検索連動型とディスプレイ型のどちらか?
あえて「検索連動型とディスプレイ型のどちらがリスクの高い広告か?」と問うた場合、答えは 「おそらくディスプレイ広告の方がリスクは高いが、やり方によってはどちらも同じようなリスクを孕んでいる」 ということになるでしょう。
ディスプレイ広告の最大のリスクは、自動化が進んだ結果予期しないサイトに広告が表示され、自社のイメージを損なうリスクを伴うことです。
ディスプレイ広告の方が人の目に触れる確率は高いのですが、配信される場所が多いがゆえにイメージの悪い所にも表示されるリスクがあるのです。
設定で配信先を除外することも可能ですが、その知識がないと要らぬ厄介ごとを抱え込むことになるかもしれません。
検索連動型でリスクと言えるのは、設定でキーワードの幅を狭めるほど露出されにくくなるので効果も薄くなることでしょうか。
売れ筋のものならともかく、ニッチな商材で絞り込みすぎると広告を打つ意味がなくなります。
(ただし、無理をしてターゲットを広げているわけではないので、経費の無駄打ちは抑えられていると言えます。)
併用という選択肢を検討する
前提となる問いをひっくり返すようですが、検索連動型広告と、ディスプレイ広告や動画広告をはじめとしたコンテンツ広告の両方に広告を打つ、という選択肢もあり得ます。
むしろそういうケースの方が多いでしょう。しかし比重は50:50ではありません。そこは商品の特性次第です。
別の考え方として、検索連動型広告とコンテンツ広告を連携させる戦略も考えられます。
たとえば商品を知ってはいるものの関心の薄いユーザーに前のめりになってもらうために、まずは記事コンテンツに誘導し、その上でさらに検索してもらう、という動線を作るのです。
また、コンテンツ広告を配信して集まった人たちをユーザーリストに蓄積することも広く行われています。
特定のコンテンツ広告に触れたユーザーにターゲットを絞り込み、その人たちにリスティング広告をぶつけていくということです。
このとき大事なのは、「検索してもらうための下ごしらえ」 をどれだけしておくか。
ディスプレイ広告を見てくれた人が必ずしも検索してくれるわけではありませんから、少しでも興味や関心が持てるようなコンテンツを用意すること が大切になってきます。
⑤コンバージョンポイントを考える
コンバージョンポイントとは?
コンバージョンポイントというのは、いわゆる成果地点です。
ECサイトにおける購入完了、マーケティングサイトにおける会員登録やSNSフォローなどが代表的な例になります。
しかしコンバージョンポイントは直接成果につながったものに限定されません。
ある商品やサービスがコンバージョンする前段階で、広告が複数回クリックされることがよくあります。そのクリックもコンバージョンポイント(成果地点)と総称されます。
これを検討することも、人間の役割と言えます。
詳しい分類はこちらの記事で解説していますので、ご参照ください。
コンバージョン(CV)の種類や、それぞれの特徴、アトリビューションの考え方について
コンバージョンポイントは機械的に計測できなければならない
蛇足になるかもしれませんが、コンバージョンポイントは機械的に計測できなければなりません。
たとえば転職エージェントでは会員登録、求人への応募などがコンバージョンポイントになりえます。
しかし「転職成功」はウェブ上で行動が追えません。面接の出来不出来などはオンライン上の行動とは無関係な要素だからです。
コンバージョンポイントは一つきりである必要はありませんが、コアになる部分はあります。それはあくまでウェブ上で機械的に計測できる要素にしておくべきです。
コンバージョンポイントというのは、いわゆる成果地点です。
ECサイトにおける購入完了、マーケティングサイトにおける会員登録やSNSフォローなどが代表的な例になります。
しかしコンバージョンポイントは直接成果につながったものに限定されません。
ある商品やサービスがコンバージョンする前段階で、広告が複数回クリックされることがよくあります。そのクリックもコンバージョンポイント(成果地点)と総称されます。
これを検討することも、人間の役割と言えます。
詳しい分類は以下の記事で解説していますので、ご参照ください。
⑥ランディングページを設定する
ランディングページは企業あるいは店舗の顔となるページです。
リスティング広告でどんなに心地よい文言を並べてみても、店の顔が汚れていたら顧客は付いてきてくれません。
コンバージョンを達成しやすい状況になっているのか、A/Bテストを繰り返して検証していくことは、重要な人間の役目と言えるでしょう。
ご存知の通り、ランディングページはペラ1枚(1ページ完結型)の構成になっている場合が大半です。
これはウェブ広告を経由して遷移先のウェブサイトに来てからのユーザーの滞留時間の短さが関係していると思われます。
すなわち、コンバージョン達成までに許された時間は、とても短いのです。
広告をクリックした勢いでユーザーがそのままコンバージョンまで駆け抜けてくれるかどうかで、成果は大きく異なってきます。
つまり情報が充実したウェブサイトよりも、必要最低限の情報が載ってるペラ1枚のページの方が広告の成果を上げやすいということです。
ペラ1枚のページに詰め込める情報量には限度がありますから、ターゲットメッセージごとにランディングページを準備するのが理想的だといえます。
⑦出稿するデバイスとターゲティングを決める
リスティング広告では出稿するデバイス、時間帯、地域を柔軟に決めることができます。
このターゲティングに合わせて最適なメッセージを考えるのが、リスティング広告のクリエイティブな部分といえるでしょう。
なお扱っている商材が多い場合、あるいはキーワードが膨大な量に上る場合、アカウント規模が膨らみすぎて予算が天井知らずになってしまうことに注意しましょう。
こうした場合ターゲティングごとにキーワードに役割を持たせ、アカウント規模を適正にしていくことも行われます。
デバイスに合わせた配信の例
たとえば法人のリードが欲しいB2B企業であれば、想定ユーザーの使っているデバイスはPC中心です。
検索サイトもマイクロソフトのBingが多いかもしれません。
ですからPCユーザーでBingで検索しているユーザーに絞って広告を配信しましょう。リスティング広告ではこれが可能です。
地域に合わせた配信の例
地域で絞る場合、都道府県レベル、市区町村レベルで絞り込むことができるばかりか、指定した地域に住むユーザー、もしくは頻繁に訪れるユーザー、住んではいないが関心を示しているユーザーに向けて別個に配信することもできます。
あるいは住所や駅、バス停を中心に指定した距離でターゲティングすることも可能です。この機能をつかえばある鉄道の沿線地域だけをターゲットにすることも簡単です。
阿部圭司氏の著書『リスティング広告 成功の法則』(ソーテック社 2013年)におもしろいエピソードが紹介されています。
阿部氏が支援する東京・都立大学の動物病院では「都立大学 動物病院」と全国にむけて発信しているそうです。
これは対象ユーザーが必ずしも都内から検索するとは限らず、地方から妹夫婦のために東京の動物病院を検索するようなこともあるはずだからです。
一方、都立大学界隈の動物病院ヘ来院できる東京都と神奈川県では「動物病院」というキーワードで検索したとき上位でヒットさせるという作戦をとっているそうです。
この例は、地域別にユーザーを区分し、それぞれで異なる行動に寄り添うことの重要さを示す ものと言えるでしょう。
成果を上げるために、今一度こうして、ユーザーの行動パターンや心理を再検討してみるのも手ではないでしょうか。
おわりに
本記事では、広告の自動運用化が進む中での、人間(マーケター)のやるべきことについて解説しました。
総じて大事なことは、根本の設定自体が間違っていたら、機械任せにしても結果は出づらいということです。
いくら自動運用が素晴らしくても、もとの設定自体がちゃんとしていないと機械がうまく答えを出してくれないというのは、どの世界にも共通する真理です。
リスティング広告においても、ターゲット選定、メッセージの文言考案など根幹の部分がきちんとしていないとシステムは成果を挙げられません。
つまり運用する側が 基本をちゃんと理解しているか という部分が大事になってくるのです。
自動化に寄り添っていくためには、基礎的な原理の習得が欠かせません。
広告の自動化が進む中、人間が担うべき役割は戦略とターゲティングの精査にあります。ターゲットの深層心理を理解し、適切な訴求を構築することで、広告運用の効果を最大化しましょう。
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