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リスティング広告(検索連動型広告)の設計と運用フロー|②広告の入札・最適化について

吉岡 佑

佐賀県出身。GMO グループ、アナグラム株式会社などの広告運用専門会社にて大規模広告の運用に従事した後、2021年に当社に参画。

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リスティング広告(検索連動型広告)の設計と運用フロー|①キーワード選定について

はじめに

前回の記事に引き続き、リスティング広告の設計と運用フローについて解説していきます。
後編となる今回では、設計フローのうち、主に入札や広告の最適化について解説します。

設計⑤:入札戦略を決める

「MUGENの3要素」でも触れたKPIに則ったスマート自動入札についてお話します。

MUGEN

⑤-1:入札における戦略の方向性

入札(ビッティング)における戦略の方向性とは、言い換えると 「どこにゴールを設定して自動入札を最適化していくか?」 ということになります。
そのゴールは以下の二つに大別されます。

  • コンバージョン数の最大化

  • コンバージョン値の最大化

    (コンバージョン数より「売上げを最大化」してくれる自動入札機能)

スマート自動入札

どちらが優れているかは活用方法次第です。

自分のビジネスに合う方法を取っていければ良いでしょう。

このほかにも「表示回数やクリック数の最大化」がありますが、大ざっぱに言って上記二つだけと考えて差し支えありません。

それぞれについて、以下で詳説していきます。

⑤-2: 「コンバージョン数の最大化」: 目標CPA(顧客獲得単価)

「コンバージョン数の最大化」は、予算の中でできるだけ多くのコンバージョンが獲得できるようにクリック単価を自動で調整してくれる機能 になります。

1日の平均予算を完全に使い切って最大化することを目指します(使い切らないこともあります)。

注意しなければならないのは、充分なデータ(参照対象となるコンバージョン数)が蓄積されるまでの学習期間が不可欠なことです。

ただしこの点はマイクロコンバージョンを設定することで短縮することができます。

さらにもうひとつ注意すべき点は、コンバージョン数の最大化は効率的なコンバージョン獲得に向いていますが、クリック単価の高騰のリスクが潜んでいること です。

CPAとは、「Cost per Acquisition/Cost per Action」の略であり、コンバージョンあたりの単価を指します。
すなわち、「目標CPA」とは1件の新規コンバージョンの獲得目標金額のことです。

目標CPAは、目標を設定して決めましょう。
「予算から逆算」することもあれば「目標から逆算」することもあります。

この算出については、https://k-hatchu.com/article/think-about-search-ads で詳しくお話しています。

「コンバージョン値の最大化」: 目標ROAS(広告費用対効果)

コンバージョン値の最大化は、目標とするROASに対して予算内で最大限のコンバージョン値を得られるように、システムが機械学習により入札金額を調整してくれる自動入札機能の一つ です。

(目標とする広告費用対効果は設定しないこともできます)

「目標ROAS※」は「かけた広告費に対する売上発生率」を測るための指標です。ROASが高いほど広告の費用対効果が高いといえます。

※目標ROAS = 平均顧客単価 ÷ 粗利 ×100

コンバージョン値の最大化に適しているのは 「サイト内で売上が確定するビジネス」 です。

というのも、商品ごとの価格や利益率が異なるケースは、コンバージョン数より「実際の売上高」が重要になるためです。

言い換えれば、目標CPAがなく、とにかく予算内で売上をできるだけ増やしたい場合に適しています。

⑤-4:補足~手動入札~

リスティング広告では自動入札が主流となっていますが、手動入札(拡張クリック単価)が今もまだ一部で利用されています。

手動入札とは、手動で設定した基準上限単価をベースに、コンバージョンの可能性に応じてGoogleに自動で単価を調整してもらう手法です。

設計⑥:広告表示オプション(アセット)を活用する

広告表示オプション(アセット)とは?

広告表示オプション(アセット)とは、広告文とは別に電話番号や住所、テキストやリンクなど、補足の情報を表示できる機能です。

広告枠が大きくなることで画面占有率が上がり、ユーザーの目に留まりやすくなります。

また、なにより効果的なのは、広告表示オプションを追加することで広告ランクが上がりやすくなることです。

広告表示オプション

Googleは広告品質の評価要素の一つとして広告表示オプションの活用を含めています。

この品質を上げるためにアセットを積極的に使うのは、よい戦略だといえるでしょう。

広告ランクが上がれば表示順位も上がり、クリック率の向上も見込めます。

活用できる広告フォーマットを全て活用しましょう。

どの場面でどのオプションをどれだけ付けるかという判断はシステムが自動で判断します。ただし見出し①、見出し②…などの文面は人が考える必要があります。

設計⑦:除外キーワードを追加する

設計⑦-1:DSAのリスク

「DSAが不向きなケースとは」でも触れた通り、GORINやMUGENなどの自動化を進めていくと思わぬキーワードが表示されてトラブルになることがありえます。

そうした場合は、あらかじめ想定しうる不必要なキーワードを除外しておく必要があります。

設計⑦-2:一般的な除外キーワードの例

一般的な除外キーワードの例として、以下のようなものがあげられます。

  • ログイン ……既存のお客様が検索するワードなので不要

  • 会社概要

  • 株価 ……株価を知りたい人は広告の対象から外したい

また意図しないキーワードが反映されないように、ネガティブ要素のあるキーワード はきちんと除外設定すべきです。

設計⑧: 広告文やランディングページを改善する

入札、ターゲティング、キーワードなどほとんどの要素が自動化されている現在、広告主に出来ることは広告文やLPを作るクリエイティブな領域と、A/Bテストや検証作業 くらいしかありません。

企業によっては何百パターンものLPをつくるところもあります。小さな改善が、意外と大きな成果につながっていくことは往々にして起こりえます。地道なA/Bテストも無下にはできません。

⑧-1:広告文のA/Bテスト

リスティング広告では常にパフォーマンスを計測し、広告を改善していく必要があります。そのとき2つの広告を比較してクリック率の高さをテストするのがA/Bテストです。

Google広告内にはデフォルトで2つのテスト機能が準備されています。

  • 広告バリエーション

テキスト広告のみに対応しており、さまざまな見出しや広告文、URLのバリエーションを作成してテストすることができます。

  • キャンペーンテスト

以前は「下書きとテスト」と呼ばれていました。

検索連動型広告とディスプレイ広告に対応し、

  1. 動画テスト
  2. テキスト広告の最適化
  3. カスタムテスト

を実施することができます。

少し前まではRSAのキャンペーンをテストのためにもう一組入稿してA/Bテストを実施していました。

しかしテストのために同じ広告を作ることは推奨されていませんし、入稿や確認に手間がかかります。

また先に入稿したキャンペーンの方にスコアが甘くなる問題もあり、現在は広告バリエーションやキャンペーンテストをつかったA/Bテスト が主流になっています。

⑧-2:LPのA/Bテスト

自動化に寄り添った上でパフォーマンスの改善を図っていくと、広告文と遷移先のランディングページが調整すべき変数になってきます。LPにもA/Bテストを行って磨きをかけましょう。こちらも広告文と同様、ページごとにテストを行います。

LPのA/Bテストの方法

  1. Google広告内にデフォルトで準備されているテスト機能(広告バリエーション・キャンペーンテスト・Googleオプティマイズ)を使う

  2. 外部ツールを利用する(AB Tasty、Optimizely、VWO)

A/Bテストの目的はコンバージョン件数とCPA(顧客獲得単価)の改善というケースが多いようです。

CPAが低いほど効率よくコンバージョンが獲得できていることになりますが、CPAはCVR(コンバージョンレート)とCPC(クリック単価)の関係で決まります。

このCPAを目標に沿って改善しようと考えたとき、以下の改善要素が考えられます。

  • CVR改善のためにランディングページを最適化する

  • CPC改善のために広告文、キーワード、入札を最適化する(広告主が手直しできる変数は広告文とキーワードのみ)

おわりに

本記事ではリスティング広告の設計と運用について、入札や最適化といった、改善の面を中心に解説しました。

前回の記事 と併せて、基本的なリスティング広告(検索連動型広告)の設計と運用のフローを概観したことになります。

長くなってしまったため、もう一度フローの全体図をおさらいすると、

  1. キーワード(=ターゲティング)を決める
  2. RSAとDSAの基礎知識を知り、ビジネスごとに最適なプランを設計する
  3. アカウント構造の基礎知識を知り、設計する
  4. マッチタイプの基礎知識を知り、配信幅を調整する
  5. 自動入札の基礎知識を知り、ビジネスごとに最適なプランを設計する
  6. 広告表示オプションの表示設定を決め、文面を作る
  7. 除外キーワードを追加する
  8. A/Bテストをはじめとした調査を行い、広告文やランディングページを改善する

以上のようになります。

当然、このフロー通りにはいかないケースも出てくるかもしれませんが、基礎的な知識として覚えておくことを推奨します。 

というのも、前編でお話したように、時流により技術面などの変化はあるかもしれませんが、それでも「普遍的な鉄則」は変わらないからです。

最後までお読みいただきありがとうございます。
本記事が、リスティング広告の設計を考えている皆様の参考になりましたら幸いです。

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