マージンか固定か、双方にとってwin-winな契約方法を考える
遠藤 結万
早稲田大学卒業後、Google Japanに入社。アジア太平洋地域の広告コンサルティングとデータ分析を担当。退社後にCMO株式会社を設立。経産省「始動 Next Innovator」採択。NHK、英紙「Economist」等取材多数。
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発注担当者に求められる能力を整理する
広告業界の手数料の仕組み
広告業界の手数料は、会社によってばらつきがかなりありますが、標準的とされている手数料は、「(グロスの」20%」です。
具体的に言いますと、100万円の予算があったとして、そのうち20%が手数料、80%が広告運用の原価、ということになります。
「グロスの」という言葉を使いましたが、対義語となるのは「ネットの」です。「ネットの20%」という場合、100万円の予算に対して別立てで20万の予算を請求するため、予算が120万、広告原価が100万円です。
ネットで予算を考える場合は、数%ほどグロスよりも手数料が下がります。先程の例で言えば、手数料は20万円で変わらないのに、原価は80万と100万円と変わっていますね。
まずは、検討する上でも標準的な金額を知っておくことは大事でしょう。
ディスカウントは是か非か
さて、代理店を検討する際に、運用手数料の比較で考えることも多いでしょう。先ほど20%が標準手数料と言いましたが、2-5%程度のディスカウントは珍しいことではありません。代理店によっては、10%を切るような手数料を提案したり、場合によっては手数料無しで運用を提案するケース
があります。
もちろん、手数料なしでは儲かりません。この場合は、媒体側からキックバックをもらったり、別のコンサルティングで売上を立てるのです。
また、手数料率が低くても運用金額が高く長期間の運用であれば十分な手数料額になるため、そのような関係性を前提にしたディスカウントは、双方にとって合理的と言えます。
発注する側からすれば、手数料は低いに越したことがありません。ただし重要なのは、委託することの本質は手数料を下げることではなく成果を上げることである、ということです。
固定 vs 手数料
最近では、固定の金額を運用コンサルティング費として請求し、広告の運用金額が増えてもそれに連動して広告代理店の請求額が増えないというケースも増えています。
確かに、実際にやっていることは工数の提供である以上、手数料が増えたから広告代理店への支払いを増やす、というのが本当に必要か?といわれると、確かに首をひねる部分もあるでしょう。
とはいえ、金額が増えればそれに連動してやることが増えるのも事実。また、広告が上手くいって予算が増えれば広告代理店の側の売上も増えるというのは、win-winの関係を作りやすい契約であるとは言えます。
利点も欠点もありますが、少ない金額でも初められて、ある種の運命共同体として事業を行える手数料の仕組みは、それなりに意味があって残っている、とも言えるのではないでしょうか。
新興の広告代理店やコンサルティング企業によっては成果報酬やレベニューシェアなど成果と手数料を連動させるケースもあります。双方が納得する契約になるのであれば、これらも検討の余地があるでしょうが、成果の考え方の違いなどで成長してから揉めるケースもあるため、契約の充分なすり合わせが必要です。
相見積もりは必要か
相見積もりを行うケースも多いでしょうが、これも漫然とやっては、ただ手数料を横に並べて判断するだけになりかねません。
まずは、求めるサービスの具体的な内容を整理します。戦略立案、広告アカウントの運用、広告費用の立替え払い、LPや配信用バナーなどのクリエイティブ制作、TVCM枠の購入、日々のコミュニケーションなど多岐にわたります。
そのうえで、双方に信頼できるパートナーシップを結べるかどうか、担当者レベルで確認することが重要です。広告代理店によっては、営業担当と運用担当が分かれていて、発注する側から運用担当者の質が判断できないケースもあります。
費用に対する透明性も非常に重要です。請求費用の詳細な内訳と計算方法を明確にすることで、双方の納得感を高め信頼関係の構築につなげることができます。
このために重要なのは、アカウントを共有してもらい、生の数字を見れる状態にするなど、双方が同じデータ・情報を保有していくことではないでしょうか。
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