リスティング広告における、GoogleとYahoo!の違いを解説
吉岡 佑
佐賀県出身。GMO グループ、アナグラム株式会社などの広告運用専門会社にて大規模広告の運用に従事した後、2021年に当社に参画。
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リスティング広告に向いている商品、向いていない商品とは?
はじめに
リスティング広告の二大運営元であるGoogleとYahoo!の違いがわからず、どちらを使うべきなのかお悩みの方もいるのではないでしょうか。
本稿では、どちらを使うべきかを検討する材料として両社の違いについて解説します。
本稿ではリスティング広告という言葉を以下の二つの意味で使っています。
・検索連動型広告;検索エンジンでユーザーが検索したキーワード(検索語句)を元に、検索結果画面の上部に掲載されるテキスト形式の広告
・ディスプレイ広告(コンテンツ連動型広告):Webサイトやアプリの広告枠に表示される「画像(動画)+テキスト」形式の広告
GoogleとYahoo!の違い
Yahoo!はGoogleと同じ検索エンジンを用いています。
また、Google広告はYahoo!プロモーション広告の全身であるOvertureを参考にしています。
そのため、両社の広告の仕組み自体に大きな違いはありません。
しかし、GoogleとYahoo!広告は別のプラットフォームを利用しています。
そのため、GoogleとYahoo!では配信先が異なります。
他にもユーザーの違い、ターゲティング方法の違い、運用方法の違いがあります。
これらの違いを考慮して、ビジネスの目的に合う方を選択することになります。
以下では、両社の違いについて詳述していきます。
1.ユーザーの違い
参考:
Yahoo!JAPAN 媒体資料
GoogleとYahoo!の違いとは?特徴・表示項目の違いを解説
Googleユーザーのボリューム層は10〜20代です。
Googleは主に若年層や技術に詳しい人々に利用されています。
特にGmail、Googleドライブ、Googleマップなどのオンラインサービスの愛好者がコアなユーザーとなっています。
一方、Yahoo!ユーザーのボリューム層は40〜60代です。
Yahoo!は日本での歴史が長く、多くのユーザーに親しまれてきました。
また、Yahoo!ユーザーの49%は女性でGoogleの36.5%を10ポイント程度上回っています。
所狭しとコンテンツが並んだサイトデザインは女性ウケが良いとされているので、ニュース記事やエンターテイメントコンテンツが目立つYahoo!のトップページが好まれているのかもしれません。
両社に共通して言えるのは、どちらかのサービスに偏って使っているユーザーが大多数を占めるということです。
予算の関係でどちらか一方に絞らざるを得ないこともあるでしょう。
しかし、広告を出稿する際は網羅性を考え、両方に出稿するのが理想です。
2.ディスプレイ広告のターゲティング方法の違い
ディスプレイ広告では細かなターゲティングを設定できないと思われることもありますが、実際にはキーワードを用いた細かなターゲティングが可能です。
しかし、キーワードを用いたターゲティングの方法でも、Googleディスプレイ広告(GDN)とYahoo!ディスプレイ広告(YDA)ではアプローチが異なります。
GDNは広告主が設定したキーワードと関連性の高いWebサイトやアプリなどの掲載枠に出稿することができます。
検索はしていないものの、属性のマッチした潜在的な顧客の目に広告を触れさせることができれば購買に繋げられる可能性があります。
一方、YDAは、広告主が指定したキーワードを過去に検索したユーザーに広告を配信します。
また、過去に自社サイトを訪問したことがあるユーザーをターゲティングすることもできます。
そのため、ニーズが顕在化した顧客にアプローチすることができます
すなわち、GDNとYDAのターゲットの違いを整理すると、以下の通りになることがわかります。
潜在的な顧客へのアプローチは結果が出るまでに時間がかかる傾向にあること、
実際に商品を購入する人はニーズが顕在化した顧客だけではないことなど、諸々の事情を考慮して使い分けを考える必要があります。
3.ディスプレイ広告の配信先の違い
GoogleとYahoo!は、ディスプレイ広告の配信先に違いがあります。
GDNは個人運用のブログなどにも広告が表示されます。
一方で、YDAは、Yahoo!の自社サービス内の広告枠を中心に配信されます。
また、提携しているサイトも原則法人のみのため、比較的信頼性の高いサイトに広告を表示することができます。
広告を届けたいユーザーが配信先のサービスを利用しているのかもGoogleとYahoo!を選択するときの考慮要素の一つとなります。
【コラム】GoogleとYahoo!の思想の違い
これまでに解説した違いを生む背景には両社の思想の違いがあります。
⚪︎検索に特化したGoogle
Googleは検索を社業の中心に据えています。
そのため、Googleは自前のメディアをほとんど持っていません。
Googleのホーム画面を見ても、検索ボックスがあるだけです。
ですからユーザーは検索するしかなく、必然的に検索連動型広告にからめ捕られていくのです。
Googleも近年になってようやく検索一辺倒ではなく、Google Discover(*註)など自社メディアを持つようになりましたが、依然として検索が社業の中心に位置していることに変わりはありません。⚪︎今もポータルサイト足らんとするYahoo!
Yahoo!は勃興期である1990年代から一貫してポータルサイトであることをアイデンティティとしています。
Yahoo!のトップページを見れば一目瞭然ですが、ニュースやオークション、ショッピング、旅行、占い、路線情報などさまざまなサービスを自社で用意しています。
思想として「検索してもらおう」というよりは、「おすすめをレコメンドして記事を見てもらおう」というキュレーションメディアのような形になっています。
なつかしいiモードと似ているかもしれません。
Yahoo!は自前のコンテンツを大量に抱えていますから、ディスプレイ広告にも大きな強みがあります。必ずしもYDAに流さなくても、出稿してもらう広告枠を自社サービス内にたくさん用意できるのです。*註 Google Discover(旧名称=Googleフィード):天気予報、スポーツの結果、ニュースなどを表示してくれるAndroid上におけるGoogleホームのコンテンツ(GoogleアプリやChromeの新規タブでも見ることができる)。 ログイン中のGoogleアカウントから収集した情報をもとに、ユーザーに合うコンテンツをトップページに「おすすめの記事」として表示してくれる機能で、検索ボックスの下にニュースのような形で画像とテキストが表示されるようになった。
4.運用難易度の違い
運用難易度において、両者の間には、違いがあります。
Googleは、Yahoo!に比べて積極的にAIの活用に取り組んでおり、広告運用の自動化が進んでいます。
そのため、Googleはある程度システムに任せておいても一定の成果を出してくれます。
また、Google広告の管理画面の方がYahoo!プロモーションの管理画面よりも使い勝手が良いです。
そのため、Google広告の方が初期設定などにかかる時間が短くなります。
広告運用の自動化の進み具合や運用工数の少なさを考慮すると、予算や人材が少ない場合はGoogle広告から始めることをおすすめします。
5.補足:日本という市場における、Yahoo!の特殊な立ち位置
世界的にはGoogleが検索の覇者であり、具体的な数字は発表されていないものの、Googleに使われる広告費の方がYahoo!よりも5倍近く多いと考えられます。
日本でもGoogleの方がユーザー層のボリュームが圧倒的に大きいのならば、Googleに多く予算を使うべきといえるでしょう。
しかし、日本はかなり特殊な市場です。
意外に思われるかもしれませんが、日本のインターネットユーザー数1億人の内、Googleのアクティブユーザーが7000万人であるのに対して、Yahoo!のアクティブユーザーは8400万人です(注1)。
また、現在どのデバイスにおいても検索シェア率トップはGoogleですが、Yahoo!もデスクトップにおいては3位、モバイルにおいては2位の座を占めています。(注2)
以上から、Yahoo!を斬って捨てるのは得策ではないといえます。
注1:総務省|令和4年版 情報通信白書|検索サービス
注2:GoogleとYahoo!の違いとは?特徴・表示項目の違いを解説 | SEM Plus
おわりに
本記事では、GoogleとYahoo!の違いについて解説しました。
両者には主に
1.ユーザー層……Googleは比較的若年層が多く、Yahoo!は中高年層、女性が多い傾向がある 2.ターゲティング……キーワードとの関連性を用いるか、リターゲティングを用いるか3. 広告の配信先4. 自動化による運用難易度
といった特徴が、目立った違いとしてあります。
しかしながら、決してこれは両者間の優劣を示すものではないことに留意しましょう。
IT業界は業界内での転職が多い世界です。
Googleで検索の開発をしていた人がYahoo!に転職して、それからMicrosoftに転職して……という形で、基本的な仕組みや思想が会社の垣根を越えて共有されていることが少なくありません。
つまり、両社は設計思想の差異でシェアを争奪しているのではありません。
これが何を意味するかというと、結局のところ、両社の差異は 「どうやってユーザーを囲っていくか=如何に自分の検索エンジンを選んでもらうか」 という戦略の部分が現れているにすぎないのではないかと考えられます。
当面、検索においてGoogleがトップシェアを占めることは揺るぎないでしょう。
しかし検索連動型広告の売り上げが頭打ちになってきているので、各社とも検索以外の部分でどれだけビジネスを広げていけるのか、頭を悩ませているという事実もあります。
もしかすると、生成系AIの台頭で大きなゲームチェンジが起きるかもしれません。
両者の違いについて本記事では解説してきましたが、当面の間、広告出稿は「Googleに固執せず、満遍なく出稿するべき」 というスタンスが基本になるのではないでしょうか……というのが、私の見解です。
次回は、リスティング広告の設定前に考えるべきことについて、Webマーケティング全般に触れながら解説します。
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