パートナーを複数社検討する
遠藤 結万
早稲田大学卒業後、Google Japanに入社。アジア太平洋地域の広告コンサルティングとデータ分析を担当。退社後にCMO株式会社を設立。経産省「始動 Next Innovator」採択。NHK、英紙「Economist」等取材多数。
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パートナー候補の違いを表にする
どのようなパートナーに委託するか
さて、具体的に自社のパートナーを検討する前に、委託するパートナーの種類を決める必要があります。候補となる「総合広告代理店」「Web専業広告代理店」「コンサルティング会社」「業務委託」「副業・フリーランス」などでそれぞれ得意分野や提供できるサービスに違いがあることを理解した上で、複数社と会話することは、適切にパートナーを選定するために必要不可欠です。
1. 「総合広告代理店」とは
広告の歴史は、総合広告代理店が作り上げてきたと言っても過言ではありません。電通・博報堂だけではなく、地域によってもいくつかの著名な企業が存在します。
総合広告代理店の強みは、CMや新聞広告などと合わせて大規模なプロモーションを遂行できることです。
特に、テレビCMを打とうとすると、やはり総合広告代理店に依頼する他なく、その際に合わせてデジタル広告の運用を依頼することも多いでしょう。
しかし、いわゆる「総合」広告代理店の多くは、実際の運用に関しては傘下の運用子会社などに二次請け・三次受けで委託することが多く、なら最初から、デジタルは運用のプロに頼んだほうが良いのでは?と感じることも多いでしょう。総じて、全体のプロモーションの規模が大きく、デジタルの重要性が小さいケースでは、総合広告代理店を通じての委託は選択肢になります。
2. 「Web専業広告代理店」「コンサルティング会社」とは
テレビCMなどのプロモーションをトータルで行う総合広告代理店に対して、デジタル広告だけを専門に行うのが専業広告代理店です。
専業広告代理店の強みは、デジタルに対する知見が深いことと、運用を自分たちで行える、という点です。
上場している企業や、電通・博報堂などのグループ会社になっている企業もあれば、数人で運用を長く行う小規模な企業まで、専業広告代理店と言っても様々です。
コンサルティング会社は、実質的には代理店機能を持つものなど様々ですが、企業によっては運用は自社で行わず、改善やアドバイスのみに特化したケースもあります。
インハウス(内製)化を行いたい場合や、自社でも知見をためていきたい場合などは、選択肢となるでしょう。
3. 「業務委託・フリーランス」とは
近年増えているのが、広告運用経験のあるフリーランスなどを「運用担当者」として時間単位で業務委託契約を結ぶケースです。
これは、インハウス(内製)化を行いたいが、自社では採用できなかったり、フルタイムで採用するほどの業務量がないケースなどで活用されます。
代理店に権限を丸投げすることのデメリットが、多くのベンチャー企業で理解された結果、このような形態が志向されていますが、とは言っても属人性は解消されておらず、業務委託契約が終わったときに誰が運用するのか?という問題はインハウス(内製)運用と共通しています。
それぞれの形式にメリット・デメリットがあるため、それらをよく理解した上で採用することが必要です。
複数のパートナー候補と会話をするメリット
複数のパートナー候補と会話することで、様々な角度・視点からの提案や戦略、アイデアを得ることができます。場合によっては、それぞれの得意分野を活かして、複数社のパートナーとチームを組んでプロジェクトを推進していくケースもあります。
例えば、企業によってはGoogle 広告に強かったり、動画広告に強かったり、広告はそれほど得意ではないがSNSの運用経験は豊富、などのケースもあります。
パートナーの強みを尊重して取り組むことで、成果に直結する可能性も高くなります。客観的な視点から、市場における自社の立ち位置や業界のトレンドなど貴重な情報を得る機会はそう多くはありません。考えられていなかった仮説の立案や施策の実行ができれば、より良い取り組みが期待できます。
各社の担当者と会話することは、いざプロジェクトが始まった場合に、担当者、担当チームとの相性を図る意味でもとても重要です。一丸となって取り組んでいけるか、コミュニケーションコストが必要以上にかからないか、など実際に会話してみないとわからない定性的な部分の評価をすることも可能です。
また、市場価格がわかりづらく、プロジェクトによって価格設定も様々です。複数社から相見積もりを取ることで、適切な価格競争が生まれ、健全な取引につながることも期待できます。
あまり考えたくは無いですが、万が一、パートナー選定後にプロジェクトがうまくいかない場合でも次の1手として他の選択肢を持つことができ、リスク分散に繋がります。
選定プロセスを明確に
複数社と会話するためには、各社に対するオリエンテーションの実施、各社との会話、実際の提案を精査・検討するなど多くの時間がかかります。各社とのコミュニケーションやスケジュール管理などの観点でも負荷が高まります。
透明性と公平性を担保して、できるだけスムーズに選定を進められるよう、予め明確な評価基準を社内で検討しておく必要があります。
例えば、下記のような基準が必要でしょう。
1. 費用感
企業によって、運用マージンが異なるケースや、費用形態が違うケースもあります。もちろん、安いほうがいいことには違いがありませんが、費用が安いだけに工数をかけてくれないケースなどもあるため、費用感だけで決めるのは注意が必要です。
2. 運用担当者の経験
企業によっては、運用担当者と営業担当者が分かれており、運用担当とコミュニケーションを取ることが難しいケースもあります。
しかし、実際に広告を運用するのは運用担当者であり、どの程度のキャリアを持っているか、どういったクライアントを担当してきたかなどをしっかりとヒアリングする事が必要です。
企業によっての強みだけではなく、運用担当者の強みも一人ひとり違います。納得がいくまでコミュニケーションすることが重要です。
3. 運用体制・サポートのレベル感
例えば、週次ミーティングを行うのか、月次ミーティングになるのか、コミュニケーションの形態はメールなのかSlackなのかなど、サポートのレベルなども企業によって異なります。
また、先程述べた営業担当者と運用担当者が分かれているのか、すべてを一人の担当者が行うのかもポイントになります。営業と運用が分かれていたり、あるいは運用そのものを別会社が行うケースなどでは、質問へのレスポンスも遅くなるケースがあります。
いずれにせよ、「手数料が安い企業」など一つの基準だけではなく、複数基準を持った上で、自社がどのような点を重視するのかをしっかり考え、多角的にパートナー候補を選定することが必要です。