広告運用、インハウス化の落とし穴とは?
遠藤 結万
早稲田大学卒業後、Google Japanに入社。アジア太平洋地域の広告コンサルティングとデータ分析を担当。退社後にCMO株式会社を設立。経産省「始動 Next Innovator」採択。NHK、英紙「Economist」等取材多数。
運用型広告は、自分で運用ができる広告プラットフォームです。ということは当然、自社で運用することが出来ます。ということは、自社運用ではダメなのか?という疑問が浮かぶはずです。
もちろん、インハウス運用で悪いということはありません。しかし、現実的には多くの企業が外部のパートナーと契約し、運用を委託します。なぜでしょうか?
そこには、3つの問題があります。
属人性の問題
「属人性」とは、特定の人に依存してしまうということです。広告運用には、特定のスキルや専門的な知見が必要になりますが、運用に関わらない社員にとっては学ぶ必要のないスキルです。
また、どうしても一人が継続的に見なくてはいけないケースが多く、分散して担当することも難しいのが実情です。
もちろん、自社だけで何人も広告運用担当の社員を雇用できる程度の大きな企業であれば、属人性の問題を解決することは不可能ではありませんが、殆どの企業がインハウス化(内製化)を行おうとすれば、属人性の問題はついて回ります。
採用と人件費の問題
属人性をやむを得ないと思っても、採用と人件費の問題が存在します。そもそも、広告運用だけが好きで、それを専門にやりたい人材は、広告代理店などで活躍することを選ぶでしょうし、デジタルマーケティング全般に通じた人材を雇うためのコストは年々上がっています。
広告代理店は、探そうと思えばいくらでも探すことができますが、自社の中で採用しようとすると、極端に難易度が上がるのです。
配置換え・退職の問題
当然、属人性が高いということは、退職した際や配置換えを希望した際はそれを補うためにかなり色々な苦労が必要になります。
他から配置換えで対応しようとしても、かなり専門性が高いため、すぐに業務に取り掛かることはできませんし、採用のハードルは前述の通り大変高いのが現状です。
つまり、「人」を起点にして考えた場合、インハウス(内製)運用には様々な問題点があり、特に小さなチームではその点が顕著になるということです。
「自動運用に任せればいい」?
近年、自動運用の精度が上がることによって、自動運用だけでも十分な成果が出るのではないか、という議論があります。
例えば広告代理店に委託して運用の手数料を払う代わりに、その分を広告予算に投入すれば、多少精度が低くても成果が出やすい、という論理です
これ自体は間違っているわけではなく、事実、多くの広告プラットフォームでは機械学習・自動運用の比重が大きくなっています。
しかし、月毎の成果の変動が大きくなったときに、「なぜ上がったのか」「なぜ下がったのか」を説明することが難しく、良くも悪くも自動運用頼みになりかねません。
片手間程度の運用で問題なければ、特に専任の担当者は必要ありませんが、ある程度以上にアカウントが大きくなってくると、説明責任も生じるため、自動運用だけではなく、外部または内製で担当する人間が必要になってくるのです。